ポリカーボネートとビスフェノールA

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ポリカーボネート樹脂技術研究会事務局

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 ビスフェノールA

安全性について

海外の動向

欧州の動向

欧州委員会の要請により、英国がRapporteur報告担当国として、2003年にBPAのEUリスク評価報告書(European Union Risk Assessment report on Bisphenol A)をまとめた。
そして、2008年6月には改訂版(UPDATED RISK ASSESSMENT)が報告された。
このリスク評価報告書の結論は次のとおり;

人の健康への影響
生殖・発生毒性、遺伝毒性、発がん性は、いずれも問題となる影響は認められない。
無毒性量(NOAEL) 50mg/kg/day(3世代生殖試験結果)

※研究会注記) 2008年リスク評価報告書の中で欧州委員会は、BPAを原料とするポリカーボネート樹脂及びエポキシ樹脂は所期の使用において消費者及び環境にとって安全であると結論づけている。

EUリスク評価報告書
European Union Risk Assessment Report Bisphenol-A

欧州食品安全機関 (EFSA:the European Food Safety Authority)

欧州食品安全機関(EFSA)は、2006年にBPAの安全性の全面再評価を行い、BPAの耐容一日摂取量(TDI)を0.05 mg/ kg体重/日に確定した。同時に、成人、幼児、子供への食品と飲料を通してのBPA摂取についても評価を行い、それらの摂取は全て耐容一日摂取量(TDI)以下であることを確認した。

EFSA 耐容一日摂取量再評価のニュースリリース

欧州食品安全機関は、2008年、2009年、2010年そして2011年に新しい科学的研究の再評価を行い、そのたびごとに、BPAの耐容一日摂取量(TDI)である0.05 mg/ kg体重/日を見直すための、いかなる新しい証拠も特定できないと、結論づけた。

2012年2月、新しい科学的研究を精査するために、「食品接触材料、酵素、香料及び加工助剤に関する科学パネル」(CEFパネル)は、BPAのリスク評価の全面再評価に着手することを決定した。

最新の動向
2013年7月、欧州食品安全機関は科学的意見書素案の第1部として、特に、消費者のBPAばく露についての評価の意見公募を開始した。今回の再評価は、2006年以来はじめての再評価で、食事由来並びに感熱紙及び大気や粉塵といった非食事由来の両方をはじめて包含する。
欧州食品安全機関の科学的専門家は、全ての集団にとって、食事がBPAの主なばく露源であること及びばく露は欧州食品安全機関の前回の推定値よりもより低いことを、暫定的に結論づけた。

食品中のBPAの存在に関する公衆衛生におけるリスクの科学的意見書(曝露評価のパート)についての意見公募

ビスフェノールAとREACH

新しい欧州の化学物質規制、REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals:化学物質の登録、評価、認可及び制限)は、2007年6月1日より施行した。
REACHの主な目的の一つは、化学物質の潜在的なリスクを評価出来るだけの十分な情報があることである。
主な欧州域内外のBPA製造者が(産業界の自主組織として)BPA REACH コンソーシアムを結成し、BPAの登録文書を作成し、2010年12月1日までに欧州化学品庁 (ECHA:the European Chemical Agency)に提出、登録を完了した。

欧州の枠組み

BPAは 食料品への接触を意図するプラスチック材料と成型品に関するEU規制10/2011/EUの中で食品接触材料への使用を許可されている。2011年1月に欧州委員会(the European Commission)は、ポリカーボネート製乳児用ほ乳瓶へのBPAの使用を禁止する委員会指令2011/8/EUを採択した。

欧州委員会 食品接触材料 法律リスト

米国の動向

環境保護庁(EPA)

2010年3月、環境保護庁(EPA)はビスフェノールA(BPA)の環境影響調査に関するアクションプランを公表した。水生生物や野生生物への影響をもとに環境へのリスクの検討、環境中の濃度についてのデータの収集、代替品の検討などについて行うとしている。

EPA BPAアクションプラン概要

米国環境健康科学研究所(NIEHS)国家毒性プログラム

2008年9月、米国環境健康科学研究所(NIEHS)は、国家毒性プログラム(NTP)が作成したビスフェノールA(BPA)最終報告書(321ページ)を公表した。この報告書の中で、NTPは、現在ポリカーボネート樹脂及びエポキシ樹脂に使用されているBPAばく露量での、胎児、乳児、子供の前立腺、脳、行動に対する影響に関して「いくらかの懸念がある(some concern)」とした。

※研究会注記)
懸念の程度は5段階で表され、
高い方から SERIOUS Concern
      CONCERN
      SOME Concern      いくらかの懸念
      MINIMAL Concern    ごく僅かな懸念
低い方   NEGLIGIBLE Concern  懸念はない/無視できる
となっており、今回の「some concern」は、5段階中の中間点である。

NTPとNIEHSは、動物実験で観察された変化がヒトの健康問題に帰結するかという点で研究者間に確信が得られていないとしている。このためNIEHSはBPAを優先分野として選定し、2009年10月にBPAの安全調査を行うため2年間で3,000万ドルを拠出すると発表した。

米国食品医薬局(FDA)

2008年8月、米国食品医薬品庁(FDA)はビスフェノールA(BPA)に関するリスク評価案を公表した。この中で、FDAはBPAの無毒性量(NOAEL)を、全身毒性で5mg/kg体重/日(5000μg/kg体重/日)とした。
FDAはこのリスク評価案について追加的識見を得るため、専門家グループである科学委員会 (Science Board)の小委員会によるピア・レビュー(専門家による査読)を要請した。この小委員会からの「ピア・レビュー・報告」、及びFDAからの回答に基づき、幾つかの追加の研究計画が進められている。

2011年、ほ乳びんと水飲みカップ用のポリカーボネート樹脂は海外からの輸入も含めて米国内では販売されていないとする業界からの要請に基づいて、FDAはFDA規則を改正し、ほ乳びんへのポリカーボネート樹脂の使用に関する規定を削除した。

2013年3月、FDAは、食品と接触する用途に使用されるBPAについてホームページ上のPublic Health Focus(公衆衛生の焦点) Bisphenol A (BPA): Use in Food Contact Applicationを更新した。FDA’s Current Perspective on BPA(BPAへのFDAの現在の展望)の中で、FDAは@FDAの現在の評価は、BPAは幾つかの食品にて見られる非常に低レベルでのばく露において、安全である。この評価は、政府機関が主導した新しい試験からの最近の研究結果を含む、沢山の試験結果をFDAの科学者が評価した事に基づいている。AFDAは、現状使用されている食品包装と容器において、BPAは安全か否かの決定を助けるべく、追加の試験を主導している。それらの試験は、いくつかは完了しており、いくつかは現在進行中である。 ことを表明している。

2013年7月、BPAを主成分とするエポキシ樹脂のコーティング材としての乳児用調製粉乳包装材への使用を放棄している実態を反映させるべきとの請願を受けて、FDAはFDA規則を改正し、BPAを主成分とするエポキシ樹脂の当該目的での使用に関する規定を削除することを決定した。この決定は、BPAの安全性とは関係がないとFDAは表明している。FDAの現行の安全調査結果は、食品接触材の製造にBPAを使用しても安全であることを裏づけており、これは食品添加物規則で認可されているところである。

FDA BPAリスク評価案、2008年8/14

FDA Public Health Focus(公衆衛生の焦点) 食品と接触する用途に使用されるBPAについて、2013年3月

国際連合の専門機関の動向

世界保健機関(WHO)

WHOと国際連合食糧農業機関(FAO) は2009年11月、ビスフェノール A (BPA)に関する日本、米国、欧州、カナダなどにおける評価の現状及びFAO/ WHOの今後の行動計画に関する情報文書を公表した。

その結果、2010年11月に、「合同FAO/WHO専門家会議」を開催し、BPAの毒性学的知見及びヒトへの健康影響を再検討した。
この会議では、BPAの主要なばく露源は、乳児用ほ乳瓶を含む食品包装容器からBPAが移行した食品であり、ハウスダスト(house dust)、土壌、おもちゃ、歯科治療物質やレジのレシートなどに使用される感熱紙などの他のばく露源との関連性はあまり大きくないとの結論に達した。
専門家は、ヒトの尿中のBPA濃度を食事からの摂取量(推定)と関連付け、摂取したBPAは短時間で尿から排出されて人体には蓄積しないことから、人体を循環するBPA濃度は非常に低いことを示した。
また、幾つかの研究や疫学的調査において、低濃度のBPAばく露とヒト健康への悪影響との関連について報告されていたが、専門家会合では、それまでの知見に鑑み、BPAばく露と関連性づけて説明するのは困難であり、明確な関連性が確認されるまでは公衆衛生上の対応を開始するのは時期尚早と結論づけた。

国際連合食糧農業機関(FAO)は、この専門家会議のレポートを2010年12月に公表している。専門家会合の結論として、不確実性を考慮すると、現実的なヒト健康へのリスク(推定)を提供するのは時期尚早であり、故に不確実性を少なくする様な研究が将来の方向であるとしている。
https://cansa.org.za/files/2009/10/WHO-Summary-Infosan-Bisphenol-A-Nov2009.pdf
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/44624/97892141564274_eng.pdf